EXIT(イグジット)という芸人をご存知でしょうか。

2017年12月結成というまだ芸歴の浅いコンビですが、現在露出も多くなってきており人気急上昇中の若手芸人です。

左がりんたろー。右が兼近

私は最近この二人を見るのが好きでこの人達が出ている番組をよく探してしまいます。

なぜこのまだ出始めで不安定な二人を見たくなるのか。
そして視聴者が求め露出が増えているのか。
もちろん面白いのですがそれだけが理由ではなく、視聴者が求めるものの変化もあると感じました。

視聴者が今求めているもの、それは「安心して見れる人」「理不尽のない優しい世界」

それを感じたのは、先日放送したアメトーーク「相方優しい芸人」を見たときでした。

今回は

  • EXITってどんな二人?
  • EXITの背景
  • なぜ視聴者は安心できる芸人を求めるか
  • 求められている「優しい世界」って?
  • 芸人の相方というのはどういう存在か
  • 30年前から変化した、相方のありかた
  • 理不尽を笑う時代も、普通ではないことを笑う時代も終わった
  • まとめ

この順で、今視聴者が求めている芸人を考察しましたのでご覧下さい。

EXITってどんな芸人?

先ほどEXITのことを「安心して見れる」と言いましたが、それは二人の漫才の腕だけではなく(それもあるけどまだ若手だからね)背景や性格がそうさせます。

EXITはチャラ男の二人がチャラい語り口調で漫才をしますが、このネタがかなり作りこまれており、リズムネタやパターン漫才ではなく正統派漫才です。(決して正統派漫才が一番、と言いたいのではなく、このキャラで正統派漫才なのが新鮮だなと思ったのです。)

ボケの兼近はアホながらも真面目で優しいキャラ、ツッコミのりんたろー。はチャラチャラした言葉遣いの中に常識的な面がちょこちょこ見えてきて、漫才は面白いし見終わったあとは「凄い」と感じる漫才です。

EXITの背景

EXITはお互い別のコンビを解散して今のEXITを結成しています。
解散理由は相方の不祥事です。りんたろー。は以前ゴッドタンという番組でこのように話しています。

「お互いに、問題を起こした時に相方がどういう思いをしてどういうダウン期間を過ごすのか重々分かっているから、コンプライアンスごり守り芸人です。やっと手にした環境を、俺のくだらねえ一瞬の欲望で失うって思ったら、よっぽどのことがなきゃ行きたくないっすよ」

チャラ男とは思えないしっかりした大人の発言。
これに対して周囲も

矢作「好感もてて好きになれる」
劇団ひとり「なんかほんと未来の芸人に出会った感じ」
小木「安心だね!」

とベタ褒めし、このあとも当番組に何度も呼ばれています。

そうなのです、この二人にある安心感は、悪いことをしない、真面目な人という安心感のことなのです。

なぜ悪いことをしない人を求めるか

ここ数年は芸能人の不倫や浮気が毎月のようにフライデーされワイドショーはそれでもちきりでした。

大御所芸人や人気芸人、愛を歌っていた歌手、政治家…取り沙汰し炎上させた視聴者も、もうこれに疲れ見たくもない状態に入っているのだと思います。

私はそうですし、実際現在は以前ほど不倫や浮気が大きく取り上げられることは少なくなったように感じます。

では今は視聴者は何を求め、何を見たいと思うのか。

それは「理不尽のない優しい世界」なのだと思います。
しかもいつも一緒にテレビに映るふたりはプライベートでももちろん仲がよく、悪ぶっている人も実はいい人、という「表だけでなく裏までしっかり優しい世界」を見たがっているのではないでしょうか。

求められている優しい世界ってどういうこと?

アメトーークに話題を戻します。
アメトーーク「相方優しい芸人」はEXITやサンドウィッチマンなどが出演し、優しいエピソードを披露しました。
ゲストでは「相方優しくない芸人」としてフットボールアワーが呼ばれました。

相方から受ける優しさとして紹介されたエピソードは
「同じ現場に行くときや帰りに車で送ってくれる」
「相方と家族ぐるみでディズニーランドに行く」
「自分が必要なものを持参していてくれる」など。

これに対して司会の雨上がりの二人と「相方優しくない芸人」として呼ばれたフットボールアワーの二人は「えー!」「コンビでそれはありえんわ!」と驚きます。

しかしこれは芸人でない一般人の私からしたら、そこまで驚くことではないのでは?と疑問が残りました。

私だけではなかったようで、「同じ現場に行く場合も別々で行く」「モノを忘れたとしても相方からは借りない」と語る宮迫や後藤に、観覧席からも「えー?」と不思議に思う声があがっていました。

芸人の相方というのはどういう存在か

このように仲良くするのが「相方」ではなく「仲の良い友人」としてなら普通のことですが、相方と仲が良いというのは芸人の中では(特に若手以外は)ありえないことなのだと言います。

なぜなのか考えてみました。

一般人の私から見て、芸人の相方というのは仕事の唯一無二のパートナーです。
しかもコンビによっては5年10年などではなく20年30年ずっと顔を合わせてきた、言わば家族のような存在です。
そして芸人であり続ける限り、おそらくこの先もずっと一緒にい続ける夫婦のような存在でもあるでしょう。

そんなかけがえのない存在に他人行儀にすることが当たり前とされてきたのはなぜか。
おそらく数十年前は「仲良くする、馴れ合う、優しくする」というのは、自分を下げて相手に尽くす、つまり上下関係でいう下の立場になるというイメージを持っていたからではないかと考えます。

2、30年ほど前は上下関係を明確にしていた時代でした。
亭主関白で外で働く夫が偉ぶり、家で働く妻は奥ゆかしく夫に頭を下げる。

縦社会も厳しく上司と部下(いや先輩と後輩というだけでも)は、言われれば仕事内容から外れても、パシリでも何でもしなければならないような、今よりも大きな格差があったでしょう。

嫁姑関係も同じく、嫁は姑のやり方をしっかり覚え、姑の世話をするという嫁は下というのが一般的、もはや美学でもありました。

そんな中ですから人間が二人いたなら、どっちが上の立場なのか当たり前のように競っていたのではないでしょうか。

芸人のコンビも同じで上の立場になろうと思うがあまり、「優しくなんてしない」「頼ることなどしない」「相談なんかしようものなら下の立場とみなされる」となり、相方と壁を作るのが一般的、いやむしろ美学となったのではないでしょうか。

アメトーークにまた話を戻しますが、蛍原さんも「みんな(観覧席の人)からしたらこっちが異常やって思うよな。でもあっち(優しい芸人)が異常なんよ」と少し自分でもなぜ相方にそのように接するのかうまく説明できないような雰囲気で言葉を絞り出していました。

つまりそれ(上下関係をつくること)が美学だったのは過去の話で、今それを守っている人たちはなぜ自分たちが馴れ合わないのか分かっていない、けれどもそうしてしまっている節もあるのではないかと思います。

現在は数十年前とは変わってきています。上下関係だけで偉そうにする、媚びへつらうというのはむしろ格好悪いことになり、同時に忌み嫌われています。

先日もワイドショーで大御所に物申した若手に「先輩やぞ!」と発言した人物がネット上で大いに叩かれていました。パワハラ、セクハラ、姑や夫からの理不尽な言葉をテレビで紹介しそれを成敗する「スカッとジャパン」という番組があるほどです。

しかし理不尽な扱いを成敗する時代も終わった

しかしそんな「スカッとジャパン」も視聴率が低迷。

私も一時期見ていたことがありましたが、序盤のスカッとする前がなんとも言えませんが不快で、現在はサザエさんとコラボしたときでさえチャンネルを変えます。

ではなぜスカッとジャパンは低迷しているのか。
これもEXITが売れてきている理由の一つになるかと思います。

視聴者はもはや悪を大きく取り上げ懲らしめたい段階ではなく、その悪を見ることさえ嫌なのではないでしょうか。
(ここで私の言う悪は”他人に理不尽な扱いをし不快にさせること”です。)
この不快感を感じるのも見るのももう嫌になっているのではないでしょうか。

だからハゲやデブで人を笑う時ではなく、ドッキリ企画で撮影されているとも知らされていない芸能人が温かい対応をするとSNSは盛り上がるのです(ニンゲン観察バラエティ モニタリング)。

頑張っている人をスタジオで温かく見守る番組が人気が出るのです(世界の果てまでイッテQ)。

先日モニタリングで放映されたオードリー春日の公開プロポーズも、大きな話題を呼びましたね。若林のコンビ愛を感じた視聴者もSNSで多数のコメントを寄せていました。

このように、今の視聴者は暖かく優しい世界を見たがっているのです。

普通じゃないことを笑う時代も終わった

またアメトーークに話は戻りますが、”相方に優しくない芸人”のフットボールアワー後藤に対して優しい芸人のサンドウィッチマン伊達が言った言葉も現代的だなと感じました。

伊達「ハゲとるやんけ!というツッコミあるじゃないですか。あれもちょっと強いってこっちは感じちゃうんですよね。自分から剥がしてるんじゃないんだから」

またEXITのりんたろー。が顔を小さく見せようとしていることに対して蛍原が「でも(顔を)大きく見られたほうがお笑い的には・・・みたいなとこあるやんか」と言ったことも観覧席は静まり返り、私もその言葉に違和感を感じました。

 これらのハゲや顔の大きさを笑いにするというのも、過去はその人と違うモノを馬鹿にして笑っていこう、つまり上下関係を見せて「ほんとにコイツは格好悪いダメなやつだ」と示すのが面白い、むしろ当たり前の世の中であった名残なのではないでしょうか。

実際すごくウケていた時代がありました。
でも今は太っている渡辺直美も格好いいとされ有名ブランドのモデルになったりメイク動画がヒットしたり、アップしたおしゃれなインスタグラムにイイネが殺到する時代です。

イケメンじゃないと言われるノンスタイル井上も、じゃない芸人と言われるハライチの岩井も自分を下げるのではなく「だからなんだ、自分はこれでいいんだ」と堂々としているから見ていて気分がいい。

「保毛尾田保毛男」を現代のテレビに出したことで大批判を浴びフジテレビが炎上したのは、ホモは今では笑われる存在なのではなく、性的マイノリティという存在を受け入れて普通に接するというのが今の美学なのです。

そういったことから、相手を卑下しない、対等に扱いむしろ相手を敬う、という姿勢のコンビが今売れ、また今後もしばらく売れ続けるのではないかと考えます。

数年前から優しい世界を求める風は吹いていた

2018年好きな芸人ランキングを見てみましょう。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO33101830Y8A710C1000000/

1位に輝いたのはアメトーークでも優しい芸人の代表になっていたサンドウィッチマンです。

その後は明石家さんま、ビートたけし、タモリの大御所に続き、5位は相方仲良しエピソードを5年以上前から明らかにしていた博多華丸・大吉。今やNHKの朝の顔です。

そして相方への熱い想いに会場が涙した、伝説に残る解散ドッキリをしたナイツが7位に入ります。

優しい世界を求める世相が現れているように見えます。このままいけば、このランキングにクリーンでかつ優しいEXITが入るのも時間の問題でしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

私がEXITにはまっているので少し独りよがりの意見になるかと思いながら書きましたが、好きな芸人ランキングに裏付けされた時に、やはり多数の人も少なからず私と同じように感じているのかもしれない、と感じました。

しかし今後はそのクリーンで優しいだけの人たちが売れるのではないとも思います。なぜなら陽が輝くのは陰の存在が必要だからです。
(フットボールアワーも大好きよ)