今日は好きな漫画フルーツバスケットについて。
最近は続編のフルーツバスケットanother(アナザー)も連載中ですね。anotherは無印の子供たちが主な登場人物になっており、無印の出来事が思い出として語られたりキャラのその後が語られたりと、フルバ好きにはたまらない内容となっています。
anotherがワクワクしない原因は2つある
しかし、私だけでしょうか。anotherがフルバに比べてドキドキわくわくしない。
もちろんフルバを読んでいたときは私も高校生から大学生で若く、今はアラサーでときめきの心が失われているという理由もあるかもしれません(だとしたら悲しい)。
しかしフルバを読み返せば今もドキドキや涙や感動で心が動くので、別の理由もあるのではないかと考えました。
同じ気持ちで「なぜ大好きな漫画の続編なのに心がさほど踊らない…?」と思っている方は、私なりの答えを出してみたのでご覧下さい。
ここでは”フルーツバスケット”を”フルバ”、
”フルーツバスケットanother”を”another”と呼んでいます。
注意:こちらはフルバとanotherのネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
「フルーツバスケット」(原作・高屋奈月)は『花とゆめ』(白泉社)において、1998年から2006年まで連載された大人気少女漫画。 全世界コミックス累計発行部数3000万部を突破し、2001年にテレビ東京系でTVアニメ化され(全26話放送)、2009年には舞台化を展開。 コミックスは全23巻、愛蔵版は全12巻刊行されており、連載が終了し10年以上経った今でも根強い人気を誇っている。
https://fruba.jp/introduction/
2015年9月からWEB上でスピンオフ漫画「フルーツバスケット another」が連載開始。コミックスの累計発行部数(既刊2巻)は34万部となっている。
1、高校生活が主軸に置かれていない。
フルバのテーマは多々ありますが、「呪いを解く」というものをメインに主人公たちの「高校生活」「恋愛模様」がテーマとなっていました。
ちなみに私が好きなのは文化祭のシンデレラ編です。
劇はほぼアドリブっぽい仕上がりで、夾は心からナレーションに突っ込んでるけど練習風景はどんなだったのか、そもそもナレーションのアドリブ対応能力高すぎるんじゃないかと疑問やらツッコミが尽きませんが大好きなシーン。
あのハチャメチャだけど笑いあり涙ありの高校生活のワクワク感や臨場感が良かったですよね。
フルバではこういった文化祭だけでなく、登校したときの下駄箱やホームルーム、授業風景やテスト、修学旅行にマラソン大会など多数の高校生活が細かく描かれていました。
むしろ学校は、生活空間である紫呉の家との二大舞台でした。
それに比べてanotherはというと、主人公の三苫さんの高校生活も出てきますが、フルバほど触れられていない気もします。
お昼休みのひとコマや生徒会室での会話以外はさほど高校は登場しません。
むしろ三苫さんとキャラが外で会うということが多く、紫呉の家や別荘、綾女の店など、フルバゆかりの地めぐりのようになっています。
それはそれで懐かしく楽しいのですが、学生生活のわくわくというのは少ないので「日常系」を見るのも好きな私は少し物足りなさを感じます。
2、三苫さんが「毒親」に心乱されているから落ち着いて読めない
ではanotherのテーマはなんなのか。
それは主人公が母親から受けるいじめや精神的虐待の乗り越え方だと受け止めています。
ひとことで言うと毒親からの解放です。
毒親っぷりはまあまあなもので、娘である三苫さんの自尊心を奪っていく言動をしたり、友人を寄せ付けないように周りへの嫌がらせをしたり、娘との約束を放置して自由に遊びに行ったりと心にグサグサくるものです。
フルバの今日子のような親はファンタジーなんだよ、ホントは母と娘なんてこんな感じじゃない?みたいな現実をつきつけられている気さえしてきます。
こういった暗いテーマのせいで読むのが辛くなってくるのではないのでしょうか。
むしろフルバの方が毒親だらけだった
しかし思い出してください。フルバの毒親の多さを。
フルバにこそ毒親はうじゃうじゃいました。
というよりキャラクターの母という存在をこんなに出してくる少女漫画は珍しいのではないかというくらい、いろいろな母が登場しました。
夾の父、由希の母、 紅葉の母、慊人の母である楝、依鈴の両親、真知の両親…。
行われる虐待は、anotherの毒親っぷりが可愛く思えるようなレベルのものもあります。
(毒親になった理由を、親たちの背景から考察した記事はこちら↓)
でも私たちはフルバに対し「これは毒親の暗い物語だ」という印象はあまり持っていないのではないでしょうか。
少なくとも私にとっては暗い漫画というイメージはありませんでした。ではなぜ毒親が1人しか登場しないanotherは暗い印象になっているのでしょう。
違いは主人公の心のブレなさ
フルバには毒親だけでなく、逆に優しいほっこり母も多数いました。
透の母である今日子を始め、花ちゃんの両親、生んですぐ羊かわいいー!と言い放った燈路の母。
人間味があってリアルだなと思ったのは、利津の母、杞紗の母。
子供を心配するあまり、逆に子供に心配をかけるというところに「あるあるだなー」と自身の母と重ねたりもしていました。
こう見ると、この話は物の怪の呪いを解くという主軸の裏に、「母が子に与える影響」という大きなテーマがあったように思います。
親に好かれようと頑張ったり、その頑張りに疲れたり、親に愛されたくて空回りしたり、受けた言葉がトラウマとして残って考え方に影響を及ぼしたり・・・。
主人公の透も優しい両親の元に生まれながらも、亡き母を永遠に一番に想い続けたいという心が、夾への恋心のストッパーになってしまったりしました。
そんな親に振り回され子供たちの心が深く傷ついたりしても、読者はなぜ何度も優しく暖かな気持ちで読んでいけたのか。
それは主人公である透が「母のような愛」を持ってキャラ達を癒していったからではないでしょうか。
言ってみれば透というしっかり立った柱が、他のキャラの心がマイナスな方向にブレても支えてくれていたのです。
読者にとっても透は支えでした。
母のような無償の愛を、無限に、誰にでも与え続ける透の存在があるため、
「きっと大丈夫、透が何とかしてくれる」
という気持ちで安心して読み進められたのではないでしょうか。
それに対しanotherはというと、主人公である三苫さんの親が毒親であり、現在もまだ親に心を動かされ続けています。
周りからのフォローがあり、友人もできたことで三苫さんは少し癒されてはいますが、はじめや睦生のフォローは高校生のすることで立場的にも少し不安定感が漂います。(学校だよりを偽装したり)。
その場しのぎのようなもので、まだまだ主人公が解放されるような兆しはあまり見えてきません。
それが読者にとっての不安感となり、フルバのような柔らかくあたたかいラブコメを想像して読んだ人には「フルバのほうが楽しかったな」という気持ちになってしまう要因となっているのではないでしょうか。
ラブコメを気軽に読む、という気持ちでは読んではいけない
余談ですが作者である高屋奈月先生の別作品に「星は歌う」というものがあるのを知っていますか。
こちらも女子高生が主人公で母親は毒親です。
しかし主人公を支える年上の男性や、お金持ちの友人、同年代より達観した頼りがいのある恋人のおかげで、毒親へのハラハラ感はあまりありません。
なにより主人公が精神面でも生活面でも独立しており、毒親という存在に対し依存したり期待したりしていません。
従って毒親が主人公の心を揺さぶることはあまりありません。
そのためメインテーマである恋や高校生活の日常に集中できる内容です。
やはりanotherは(これが一番人間らしいとも思いますが)主人公の心がまだ親に支配されており、気軽に読むものではなく意を決して読む雰囲気になっているのが、命題の答えだと思われます。
とはいえフルバの子供たちから語られる透たちのその後を見るのは楽しく、三苫さんがどう幸せになってくれるのかなどanotherの終わりを見届けるのも楽しみなので、今後も読み続けたい作品です。
anotherを読むとフルバを読み返したいという気持ちになるのもいいですよね。
当サイトには、フルバについての考察記事もいくつかあります。
フルーツバスケット~透が存在した本当の理由~
フルーツバスケット謎考察&豆知識~明かされていない慊人の年齢、閉じた蓋の正体etc~
フルーツバスケット全巻、全期間の年表(当時のカレンダーを参考に日付も考察)
親になって読み返すフルーツバスケット~彼女たちはなぜ毒親になったのか~
是非ご覧下さい!